2月のテーマ:習い事について~複数の習い事をさせてもいい?~


第3回:複数の習い事をさせてもよいか?

著者:富山大学 人間発達科学部 准教授 西館有沙先生

子どものいろいろな力を伸ばしてあげたいと思うのが親心です。

220260そのために何をすればよいかを考えた時、習い事に通わせることが頭に浮かぶことがあると思います。

「運動能力を伸ばしてあげたいから体操教室に通わせてはどうだろうか」「うちの子は踊るのが好きだからダンスの才能を伸ばすために教室に入れよう」「ピアノを習わせるのは子どもの情操を育てるのによい」「そろばんを習うと、計算する力が身につく」などと考えるわけです。

一方で、複数の習い事をさせることに不安を感じることもあるでしょう。

そのため、「複数の習い事をさせてもよいか。どこまで何をさせてよいのか」という疑問に、答えがほしいと思う親は少なくありません。

習い事はいけないことではありません。

子どもが楽しんで取り組めているのであれば、目標をもってチャレンジするというよい体験を積むことができます。

また、子どもが「私は〇〇が得意」というものをもつことで、自分に自信をもてるというメリットもあるでしょう。

一方で、親が複数の習い事を子どもにさせることに不安を感じる背景には、「子どもに無理をさせることにならないだろうか」という思いがあります。

著者も小さい頃に習い事をした経験がありますが、習い事そのものは楽しくても、練習が苦痛であったり、習い事に行くまでにぐずったりしたことがあります。

それは、練習しないと先生に怒られるという思いが気分を暗くさせたり、まだ遊び続けたいのに習い事に行く時間だと急かされたりしたためです。

加えて、「習い事があるから、明日は遊べない」と友だちの誘いを断るのも辛かった思い出があります。

つまり、習い事を楽しいと感じていたとしても、それに関連することのすべてが楽しいわけではないのです。

特に幼児期の子どもには、遊びを満足するまで続けることのできる時間が必要です。

その時間が、複数の習い事によってブツリ、ブツリと切られ、いつも不完全燃焼であると、上手に遊ぶ力が身についていきません。

遊びはとても自由度が高いものです。

自由だからこそ、子どもは興味の向くままに、チャレンジしたり、表現したりすることができ、それが心身の発達につながっていきます。

そのような遊びがもつ力を狭めてしまうほど習い事に拘束される状態は、子どもにとって好ましいものではありません。

幼児期には、自由に遊ぶ時間をきちんと作ってあげてほしいのです。

 

著者紹介

西館 有沙/にしだて・ありさ 富山大学 人間発達科学部 准教授 社会福祉士・保育士。

専門は児童福祉学、子育て支援。

大学では保育者養成を担当し、また、地域の保育者を対象として相談支援を行ったり、勉強会を開催したりしている。

 

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