子どもの障害を受け入れるまでの親の心理的変化

子どもの障害を受け入れるまでの親の心理的変化

「うちの子どもは障害があるのでは?」と親が感じてから、子どもが発達障害であることを受け入れるまでには、さまざまな葛藤と心理的変化があります。

発達障害の診断がついていない段階では、子どもの「できる」「わかる」ところを探して、子どもに障害がある可能性から目を背けてしまうこともあります。しかし、そのように現実と向き合わない姿勢でいる限り、親子ともども日常の困った場面から抜け出せない状況が続くことになります。

子どもの障害がわかることで、前向きな気持ちになれる場合もある

子どもに発達障害があるとわかったとき、親は大きなショックを受けることがほとんどです。

その一方で、これまで「親のしつけが悪いせいだ」「甘やかして育てているせいじゃないの?」などと周囲から責められ、悩んできた人の場合、「子どもの問題行動の原因がわかった」「子育ての方向性がみえてきた」と、これからの子育ての糸口をつかんで前向きな気持ちになれるケースもあります。

子どもに障害があるとわかったときに親がおちいる心理状態とは

子どもの発達障害がわかったことで、大きな不安を感じるのは、ごく当たり前のことです。子どもに障害があると判明すると、親は次のような心理状態のスパイラルを経験する場合が多くあります。

1.イライラ期 …… 周囲のちょっとした言動や態度が気に障る時期

初めにイライラ期に突入すると、やり場のない怒りを感じ、周りの人の言動が悪意のないものであっても感情を逆立てられるようになります。たとえば、他の親子が楽しそうにしているだけで「私たち親子はこんなに苦労しているのに、なぜあの人たちはあんな気楽そうに、普通に過ごしていられるの?」などと感じて、イライラしてしまいます。

2.抗うつ期 …… 自分への怒りや孤独感から、気分が落ち込む時期

抗うつ期は気持ちが沈み、暗い気分におちいる時期です。イライラ期には他者などの「外」に向かっていた負の感情が、今度は矛先を変えて自分に向ってきます。「私自身になにか落ち度があったのでは?」という問いが湧き、自分を責めては落ち込むのを繰り返します。この時期には「周囲に私を理解してくれる人はいない」と深い孤独感を抱くことも、よくあることです。

3.無気力期 …… 何も考えられない時期

イライラ期と抗うつ期を過ぎると、今度は何も考えられなくなる時期が来ます。何に対してもやる気が起きなかったり、何もしていないのに疲労を感じたりします。これが「無気力期」です。

子どもの障害とともに、自分のこころの葛藤も受け入れる

このようにイライラしたり、自分を責めたり、無気力になったりする時期にある間は、暗く長いトンネルの中を歩いているような途方もない気持ちになります。しかし、このようなこころの葛藤は、親が新しい「親としての自分」になるために必要な道のりなのです。長いトンネルに必ず出口があるように、長い葛藤ののちに、いつしか子どもの姿を穏やかに見守れるようになったり、未来に向かって子どものために何ができるかを考えられるようになっている自分に気づきます。

一度トンネルを抜け出しても、子どもの就学や進学などの節目節目で、また「イライラ期」「抗うつ期」「無気力期」のトンネルに入ることもあるでしょう。このような時期におちいることは、決して無駄なことではありません。さまざまな時期を経験しつつ、それを乗り越えていくことは、「子どもの親」として成長していくことでもあるのです。

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