2月のテーマ:習い事について~「3歳からでは遅すぎる」にまどわされないで~
3歳からでは遅すぎる」にまどわされないで
著者:富山大学 人間発達科学部 准教授 西館有沙先生
「3歳からでは遅すぎる」というフレーズを聞いたことはありますか。
「遅すぎる」という言葉を聞くと、不安になりますね。
しかし、本当に「遅すぎる」ということがあるのでしょうか。
なぜ、このようなフレーズが使われるようになったのでしょうか。
ひとの脳の中は、情報をやりとりする「ニューロン」という神経細胞が、くさりのようにつながっています。
このニューロンとニューロンをつないでいる部分を「シナプス」と呼びます。
たくさんのシナプスでニューロンをつなぐことで、ひとは情報をうまく処理できるようになります。
シナプスは、さまざまな刺激を受けることで、3歳になるまでの間にものすごい勢いで増え、その後は徐々に減っていくと言われてきました。
そのため、3歳になる前に早期教育が必要であるという考え方が生まれてきたのでしょう。
しかし、そもそもシナプスの数や働きがその人の発達にどう影響するのかは、まだわからないことが多いのが事実です。
また、どのような刺激をどの程度与えれば、子どもの脳が発達するのかも、あまりよくわかっていません。
このような状態ですから、「3歳からでは遅すぎる」と言いきることは、できないはずなのです。私自身は、この説に疑問をもっています。
気をつけなくてはいけないことは、親がこのフレーズに振り回されて、子どもが望んでいないのに「あなたのためだから」といろいろなことを小さいうちから強いてしまうことです。
子どもは、大人から強いられるよりも、自分が興味をもったことに楽しんで取り組むほうが、多くの学びを得られます。
日本の幼児教育は、遊びを通しての指導を中心にすえています。
それは、自発的な遊びが、子どもの心と身体を大きく発達させると考えているからです。
子どもは、さまざまな体験を積むことで発達していきます。
新しい体験をする時には誰でも不安になりますが、その時にチャレンジする力を与えてくれるのが、安心できる人の存在です。
「ママとパパがそばにいてくれる。見ていてくれる」と感じることで、子どもは新しいことにチャレンジできます。
また、成長するにつれて、親から離れて、保育所や幼稚園など、いろいろな場所で自分の体験を広げていくことができるようになっていきます。
その時には、親もすぐに手を差し伸べて助けるのではなく、子どもから少し離れて、子どものチャレンジを応援してあげましょう。
著者紹介
西館 有沙/にしだて・ありさ 富山大学 人間発達科学部 准教授 社会福祉士・保育士。
専門は児童福祉学、子育て支援。
大学では保育者養成を担当し、また、地域の保育者を対象として相談支援を行ったり、勉強会を開催したりしている。
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