6月第2回:祖父母の家に行って「しつけ」に悩んだら…
祖父母の家での子どものしつけ
筆者:富山大学 人間発達学部 准教授 西館有沙先生
祖父母にとって親子が遊びに来た時は、孫である子どもとの関係をつくる絶好のチャンスです。
祖父母は子どもの笑顔を見ることを楽しみにしています。親としても、祖父母が子どもをかわいがってくれることは嬉しいものです。ただ、祖父母の家では普段通りに子どもをしつけられないことが、親の悩みになります。
親が普段通りのしつけができない理由は主に三つです。一つは、祖父母が子どもを甘やかしてしまうということ。第二は、祖父母が子どもの手本にならないことをするということもあります。第三は、「母親としてちゃんと子育てしているかどうか」を祖父母がじっくり見ていることに気が重くなります。
たとえば、親が「ご飯の前にお菓子を食べてはいけない」と子どもに言い聞かせているのに、祖父母がご飯の前に子どもにお菓子をあげたとします。祖父母が自分の義理の親であった場合は特に、親は対応に困ります。祖父母に苦情を言ったり、子どもを注意したりすると、祖父母との仲がギクシャクするかもしれないからです。
お嫁さんである母親は、祖父母に自分のことを認めてほしいという気持ちがあります。そのため、祖父母には自分がきちんと親の役割を果たしている姿を見せたいのです。しかし、上の例のように、子どものしつけが思うようにできないことが出てきます。それでも親が子どものしつけや自分の評価にこだわっていると、心に余裕をもてなくなります。祖父母の家で親がピリピリしていると、その緊張感は子どもに伝わります。これでは子どもが、祖父母とのやりとりを楽しむことはできません。
祖父母の家は、子どもと祖父母の関係をつくる場です。
しつけについては、子どもに「おじいちゃんとおばあちゃんの家では、いつもは許してもらえないことが許されるけれど、だからといって何でも許されるわけではない」ということを学ばせる場であると、割り切って考えてみてください。親が多少のことには目をつぶってやることで、祖父母と子どもの関係はすごく良くなります。それは祖父母と嫁である母親の関係が良くなることにもつながるのです。
たとえば、子どもが普段は買ってもらえない物を祖父母からもらった時には、親が「よかったね。今日は特別だね」と喜んで見せます。また、子どもが節度をわきまえない行動をとってしまった時には「それはいけない」と伝え、どこまでが許されて、どこからが許されないのかを子どもに学ばせていきます。先の例で言えば、祖父母と子どもがご飯の前にお菓子を食べることには目をつぶるけれど、子どもがお菓子を食べすぎた時には「食べすぎると良くない」と、子どもを諭してやるのです。
筆者紹介
西館 有沙/にしだて・ありさ 富山大学人間発達科学部 准教授 社会福祉士・保育士。
専門は児童福祉学、子育て支援。
大学では保育者養成を担当し、また、地域の保育者を対象として相談支援を行ったり、勉強会を開催したりしている。
過去のコラムはこちらから!