8月第4回:夜泣き、夜驚について


第4回 夜泣き、夜驚について 

著者:東京未来大学 こども心理学部 講師 西村実穂先生

今回のコラムでは、子どもの睡眠中によくある夜泣きと夜驚について説明します。

子どもが夜泣きをしたり、夜驚の状態になると、「私が昼間に叱りすぎたからかしら?」「幼稚園で悲しいことがあったから、こんなに泣くんだ」と思ったり、「父親のしつけが厳しすぎるから、夜泣きするんだ」と考える方がいます。しかし、夜泣きや夜驚は心理的な問題や叱りすぎているために起こるものではありません。

・夜泣き
 

夜泣き夜泣きとは、理由がないのに夜間に泣くことをいいます。赤ちゃんのころの夜泣きは、睡眠のリズムがしっかりと安定していないために起こります。生まれたばかりの赤ちゃんは昼夜の区別なく寝たり起きたりを繰り返しますが、生後半年くらいたつと、夜まとまって一定時間寝られるようになります。睡眠時間が安定する過程で、夜間に目覚めてしまい泣く、ということになってしまいます。夜泣きは赤ちゃんの睡眠リズムから幼児の睡眠リズムへと移行する過程で起こる生理的な現象ですので、心配することはなく、むしろ成長している証なのです。生理的な現象である夜泣きを改善するための方法は、残念ながらありません。ただ、赤ちゃんのお世話をするお母さんにとっては夜泣きはつらいものでしょう。毎日夜泣きの赤ちゃんをあやしていて睡眠不足が続いてしまうと、お母さんがつらくなってしまいます。お父さんに夜泣きの対応を任せる日を作る、思い切ってお母さんも寝てしまう、昼寝をする、というようにお母さんが無理をしすぎない方法をとってください。
赤ちゃんのころだけでなく、2、3歳になっても夜泣きをする子どもがいます。夕方に寝てしまい、夜に熟睡できないために夜に目覚めて、夜泣きをするのです。夕方に身体を動かす遊びをして、夜にしっかり眠れるようにしましょう。

・夜驚
 

夜驚寝入ってから2~3時間後突然起きてパニックを起こしたような叫び声をあげることを夜驚とよびます。3歳~6歳ごろによくおこり、10歳ごろにはみられなくなります。叫び声をあげるほかに、汗をかいたり、心臓の鼓動や呼吸が速くなっていたり、身体がこわばったりする場合があります。ときには部屋のなかを走りまわることもあります。
夜驚は、脳が発達途中であるためにおこります。子どものうちは脳の機能が幼く、昼間受けたストレスに脳が耐えきれないという状態が生じます。発熱などの体調不良や、慣れない場所で宿泊するといった環境の変化はもちろんのこと、普段の保育所や幼稚園のなかで起こったささいなできごとであっても、子どもにとっては大きなストレスになります。こういったできごとが刺激として脳に残り、夜驚の症状として現れます。夜驚の症状があるときには話しかけても答えなかったり、つじつまの合わない答えがかえってくることが多いです。歩き回ったりする場合には、けがを防ぐために、床に物を置かないなど部屋の環境を整える必要があります。朝起きた後に、本人に夜起きて叫び声をあげていたことを聞いても覚えていませんし、知らせる必要もありません。子どもに「夜起きて叫んでいたんだよ」と知らせると、「知らないうちにそんなことしてしまったなんて、ぼくは変なのかな」と子どもの不安を高めてしまいます。夜起きたときには、無理に起こすようなことはせず、安全に注意をしながら見守ります。

 

著者紹介

西村実穂
東京未来大学こども心理学部 講師 看護師・保育士
乳児保育の専門家として、近年は院内保育や子どもの食に関する問題、気になる子どもの保育の研究に取り組んでいる。
保育所や幼稚園を巡回し、気になる子どもの関する相談活動を実施している。

 

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