育児のイライラ対処法 第4回~上手なストレス発散方法~


著者:筑波大学 准教授 水野智美先生

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 育児中は思うように事が進みません。目の前の細かなことに追われて1日が終わってしまい、達成感を得られないままに疲労だけがたまっていきます。

 しかも、家事や育児でがんばっても、誰からも認めてもらうことができないことがあります。子育てにストレスはつきものなのです。

「ストレスコーピング」とは? ストレスを解消するための2つの方法

 フラストレーションを溜めこみ過ぎないためには、ストレスを上手に対処する方法を身につけなければなりません。「ストレスをどのように受け止め、どのように行動するか、という対処方法」のことを、専門用語でストレスコーピングと言います。

 ストレスコーピングには、「ストレスとなっていること自体を解決する方法」と、「ストレスによって憂鬱な気分になるのを防ぐために気晴らしをしたり、物事の良い側面に目を向ける方法」があります。

 しかし、子育てで感じるストレスの大半は「子どものトイレトレーニングが進まない……」「子どもが言うことを聞かない……」といった、解決には時間と辛抱が必要な問題から来ていることが多く、親の工夫だけですばやく克服できるものではありません。つまり、子育てで感じるストレスにおいては、「ストレスとなっていること自体を解決すること」は難しい場合がほとんどです。

 ストレスコーピングの方法のうち、もう一方の「ストレスによって憂鬱な気分になるのを防ぐために気晴らしをしたり、物事の良い側面に目を向ける方法」こそが、子育てに役立つストレス解消の視点と言えるでしょう。

 たとえば、子どもが寝た後や幼稚園に行っている間などに、自分の好きなことをしてみてください。ゲームが好きならば、ゲームをするのでもいいですし、おいしいお菓子を食べる、好きなお酒を飲むということでもいいでしょう。

頼りになるのは、やっぱり先輩ママ

 また、自分の子どもよりも、少し年齢の高い子どもをもつ先輩ママに話しを聞いてもらうことも、有効なストレス解消になるかもしれません。先輩ママと話をすることによって、子どもの成長の過程が見えてきて、「もう少しすれば、今のような大変な時期は終わりそう」などと、先の見通しが持てたりします。他にも、先輩ママがしていた具体的なストレス解消法を聞くことも参考になるでしょう。

時には愚痴をいうのもOK!でも、愚痴ばかり言っていると……

 仲間同士で愚痴を言い合うことも確かに気分がすっきりしますが、少し注意が必要です。つらい気持ちを吐き出すことは、確かにストレス発散になります。しかし、愚痴ばかりを言っていると「私は何でこんなに不幸なのかしら」「私はひどい環境に置かれている」などと、自分がつらい状況にいるのだとより強く感じて、愚痴を言う前よりもストレスをためてしまうことがあります。

 愚痴を言うことも時には有効なストレス発散になりますが、それがストレスを吐き出すための唯一の方法とならないように、注意が必要です。ぜひ、いろいろなストレス発散法を試してみてください。

 

水野智美先生

筑波大学医学医療系准教授。臨床心理士。専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に取り組んでいる。

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