7月第1回:テレビが子どもの発達に与える効果
テレビが子どもの発達に与える効果
筆者:筑波大学 准教授 水野智美先生
私たちの生活には、テレビやビデオが当たり前のように入りこんでいます。
「家事が忙しい時に子どもにテレビやビデオを与えて、静かにさせてしまっている」などと後ろめたい気持ちをもたれている方もいることでしょう。
しかし、最近の子ども向け番組は、音や映像、内容などの点から、子どもが飽きずに見られるさまざまな工夫がなされています。そのため、普段は家の中を走り回ったり、大人にまとわりついて離れない子どもも、お気に入りのテレビやビデオが流れると、夢中になって見ています。
以前、「テレビやビデオ(DVD)が子どもの言葉の発達を遅らせる」という調査の結果が相次いで報告され、「乳幼児にはテレビやビデオ(DVD)を与えない方がよい」という意見が専門家から出されました。しかし、子どもがどのような環境でテレビやビデオ(DVD)を見ていたのか、どういった内容を見ていたのか、まわりの大人がその子どもにどのように関わっていたのかが十分に検討されないままに議論されていました。
一方で、番組の内容によっては、さまざまな言葉を学習できるなどの効果を示す研究があります。また、テレビやビデオで放映されていた内容をまねして、仲間と助け合うようになったり、まわりの人にあいさつができるようになったり、喜んだ時は「僕、すごくうれしいんだ」などと適切に感情を表現できるようになるなどの効果を示している研究もあります。
ただし、単にテレビやビデオを子どもに見させておけばよいものではありません。保護者が子どもとテレビやビデオ(DVD)の内容について会話をしている家庭ほど、子どもの言葉の発達によい影響があることがわかってきました。そのため、保護者と一緒に見て、その内容を材料にして、子どもとたくさんのことを話す、あるいは子どもが見た番組を保護者に伝えるようにするなどの工夫が必要です。
テレビやDVDの番組は日常生活ではなかなか体験できないことをたくさん扱っています。
子どもが知らなかった言葉も使われます。子どもが理解できない部分を保護者が説明してあげたり、見終わった後に親子で感想を話し合ったりすることによって、子どもはテレビやビデオからより多くのことを学び、自分の世界を広げることができます。テレビやビデオを生活から排除するのではなく、賢く使う方法を考えてみてください。
水野 智美・・・筑波大学医学医療系 准教授 臨床心理士
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に