4月第1回:みんなが陥るダメな叱り方3箇条
みんなが陥るダメな叱り方3箇条
筆者:筑波大学 准教授 水野智美先生
「子どもに何度,注意しても言うことを聞かない」「叱られているにもかかわらず,子どもは親の言うことを聞いていない」などの悩みを抱えている方は多いことでしょう。これには,親の叱り方が上手ではないことが関係しています。
ダメな叱り方
①叱る時間が長い
子どもの集中力は長くても5分です。それ以上になると,「早くこの話が終わらないかな」と考えてしまいます。そして、子どもは何を叱られているのかがわからなくなり,自分がなぜ悪かったのかと反省できなくなります。
また,1回に叱る時間は短くても,子どもと顔を合せるたびに何度も何度も繰り返し,叱る親がいます。その場合にも,子どもは叱られた当初は反省しても,何度も言われると「またか」と思い,反省の気持ちは薄れてしまいます。
②叩く
叱る際に,叩くといった体罰をすることも,子どもの反省につながりません。子どもは親から叩かれたくないために,その時は良くない行為をやめます。しかし,親が見ていないところでその行為を繰り返していたり,大きくなっても,「人から叱られない」ことが善悪の判断になり,自分で何がいけないことなのかを考えられなくなってしまいます。叱られるのを避けるためにウソをつくこともあります。
③何を注意されているのかが子どもに伝わっていない
親の気分で叱ったり叱らなかったりすると,子どもはやって良いことなのか,悪いことなのかを,親の顔色を見て判断するようになります。また,親が「アレもダメ,コレもダメ」とすべてに注意をしていても,「ダメ」と言われることが多すぎて,何をすることがいけないことなのかを覚えていられません。
効果的に叱るために
上記の「ダメな叱り方」をしていないかを反省してみてください。その上で,以下のことに取り組んでみましょう。
①子どもの年齢に合わせて,守るべきことを絞る
子どもの年齢や理解力にあわせて,守るべきことを決めます。欲ばらずに,子どもの安全に関すること,他の人の迷惑にならないことなど,その時点で最も優先されることに絞ります。子どもと相談しながら決めることが効果的です。
②守るべきことを目で見てわかる形にしておく
守るべきことを書いて部屋にはっておいてください。また,毎日,それを子どもと確認をします。これをすることによって,子どもは何をしてはダメなのかがわかるようになります。
③子どもが守るべきことを破った時にはなぜ叱られたかがわかるようにする
子どもが守るべきことを破った場合には,「決められたことを守らなかった」から叱られたことがわかるようにします。はってある紙の前に子どもを連れて行き,「このことを守らなかったから叱っている」と伝えてもいいでしょう。ただし,前にも述べたように,叱る時間は長くならないように,また何度も繰り返さないようにしてください。
④守るべきことを守っていたらほめる
決めたことを守るのは当たり前であると考えて,子どもが守っていてもほめない親が多くいます。それでは,「守っても良いことがない」と子どもが考えてしまいます。そこで,子どもができていたらほめてください。「約束を守ったら,こんなにほめてもらえる」と子どもが感じられれば,「守る」という行為が続きます。
水野 智美・・・筑波大学医学医療系 准教授 臨床心理士
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に
叱り方に関する関連記事