兄弟けんかを通じて子どもを伸ばす意外な方法
きょうだいげんかについて
著者:筑波大学准教授 水野 智美先生
兄弟げんかは悪いことではありません!
一緒に遊ぶとすぐにきょうだいげんかになるという家庭は多いことでしょう。
お父さん、お母さんは、けんかにうんざりしているはずです。
しかし、ひとがふたり以上いれば、けんかは起こるものです。
やめさせたいと思って、やめられるものではありません。むしろ、きょうだいげんかをしない家庭の子どもの方が、社会性が伸びないという報告があるぐらいです。
きょうだいげんかの良さは、けんかをした後にそれぞれがケロッとして、また元の状態に戻って一緒に遊べることです。
友だちとのけんかでは、なかなかそういうわけにはいきません。けんかの後に仲直りができず、元の状態に戻れないことがあります。
また、家でけんかをしていなければ、友だちとけんかをする時に、どのぐらいの加減でやればよいのかがわからずに、強く言い過ぎてしまったり、暴力をふるってしまったりします。
これによって、友だちとの関係が悪くなったり、相手にけがをさせてしまったりすることになります。
つまり、友だちとの良い関係を作るために、家の中で上手にきょうだいげんかをさせることが大切なのです。
子どもはけんかのルール、人間関係のルールを家の中で実践しながら学んでいると考えてください。
ただし、単にけんかをさせておけばいいわけではありません。
両親がケンカのモデルを示すことが大切!
どのようにけんかをすればよいのかのモデルが必要です。
最も身近で子どもの参考になるモデルは、両親の夫婦げんかです。
暴力をふるわない、他人に相手の悪口を言わない、けんかの後は仲直りをするといったルールを守って両親がけんかをしていれば、子どももそれを手本にけんかをすることができます。
反対に言えば、両親が暴力をふるうような良くないけんかを見せて入れば、子どももそれをまねてしまいます。
両親がけんかの仲裁に入らないことが大切!
子どもがきょうだいけんかをしている時には、親はけんかの仲裁に入ってはいけません。
親が仲裁に入らなければ、子どもたちは自分でけんかの区切りをつけ、仲直りをしていく方法を考えます。
また、お兄ちゃんが弟を強くたたき、いつまで経っても弟が泣き止まなかったら、お兄ちゃんは「ちょっとやりすぎたかな」と反省したり、次は手加減しようなどと思うのです。
弟は弟で、どう反撃したら、お兄ちゃんとうまく戦えるのか、どうしたらお兄ちゃんからたたかれずにすむのかを考えます。
このように、子どもが自分自身で考えて、上手にけんかをできるようになるのです。
しかし、ここで親が仲裁に入ってしまうと、子どもたちはどう相手とけんかをすればよいか、力加減をすればよいかを考えることなく、「自分だけが怒られた」「自分はいつも我慢をさせられる」などと不平を感じるとともに、親が言った「~が悪い」という判断が善悪の基準になってしまいます。
親はぐっと我慢して、最後まで子どもに任せてください。
水野 智美・・・筑波大学医学医療系准教授 臨床心理士
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に