子どものひと言「うちにはママが2人いる…」
第4回:子どものひと言「うちにはママが2人いる…」
お父さんとお母さんが同じことをお子さんに言っていませんか?
著者:筑波大学准教授 水野 智美先生
子どもをしつける際に、父親と母親が必ずしも同じことを子どもに求める必要はありません。
子どもが片付けをしないと母親は叱るけれども、父親は特にそのことについては何も言わない、しかし父親は子どもがうそをついた時には厳しく叱るというように、それぞれが子どもに守らせたいと思うことが異なっている方が、むしろよいのです。
最近では、父親が「二人目の母親」となって、母親の価値観のもとで、子どもを叱る風景をよく見かけるようになりました。
父親が「そんなことをしていると、ママに叱られるよ」と言ったり、母親から子どもを叱るように促されて、しぶしぶ子どもに注意しているケースが多くあります。これでは、しつけにおいて子どもに求めることが、母親の価値観だけになってしまいます。
もっとも、父親が子どもに求めることを母親が「そんなことは守らなくてもいい」「パパがいる時だけ守ればいい」などと言って、一方が求めることを否定することはよくありません。それをすると、子どもは混乱したり、父親(あるいは母親)を軽視することになってしまいます。
しつけにおいて大事なことは「両親の役割分担」です!
父親と母親がよく話し合って、役割分担をして、子どもに守らせたいことを決める必要があります。
「父親との約束」「母親との約束」を決めるのです。しかし、あれもこれもとよくばってはいけません。子どもが父親や母親と話し合える年齢であれば、子どもとそれぞれの親が話し合って決めてもいいでしょう。
それを打ち出すことによって、父親(母親)はこのことを大切にしているのだ、ということが子どもに伝わるようになります。
できれば、それぞれの親との約束は、視点が異なるようにすることが望ましいです。
たとえば、父親が将来的な一歩を踏み出せるようなチャレンジ精神を大切にしたい内容であれば、母親は健康で安全な生活を送れることを重視したいという内容にするといった具合です。
一般的には、生活の細かな部分を日常的に見ている母親の方が、目の前の身近な視点での内容になり、父親の方が細かなことは気にせず、大きな視点で考えることが多いです。ただし、家庭によってこれが逆転していても構いません。大切なことは、よく話し合ったうえで、両親のそれぞれの価値観で子どもを育てていくことです。
それによって、子どもの価値観の幅も広がります。
水野 智美・・・筑波大学医学医療系准教授 臨床心理士
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に