言葉の引き出し方のポイント

自閉症と知的障害の重度の子ですが、言葉が話せなくていつも本人が怒ったり、泣いたりすると親の体を手でたたいたりします。
言葉はどのように引き出せばいいのでしょうか?

まず大切なことは、言葉を出す前提として、自分がしたいこと、してもらいたいことといった「要求」を表現できなくてはなりません。

098082お子さんが怒ったり、泣いたり、パパやママをたたいたりするのは、言葉を話す第一段階なのです。

これからはお子さんの要求の仕方や感情表現を適正なものへ変えていくのです。

言葉を引き出すためのステップですが、まず1つめはお子さんの要求を「サイン」で示せるようにしてあげることです。

例えば、何かものが欲しい時は「ちょうだい」の仕草、イヤイヤの時は「首を横に振る」といった形です。

これをお子さんが出来るようになるまで何度も何度も繰り返してください。

そして、ちょっとでも出来たらたくさんほめてあげてください。できなくても決して叱ってはいけません。

トイレに行きたい、ジュースを飲みたい、お菓子を食べたい、テレビを見たい、いやだなどのサインから始めてください。

お子さんがわかりやすいサインをパパとママで考えてあげてください。いろいろなWEBでも紹介されています。

第2のステップは、「絵カード」を使う方法です。

例えば、トイレに行きたくなったら、トイレの絵カードをお母さんのところに持って行くといった方法です。

このときに、カードを見ながら「トイレだね」と声を出してあげてください。

これも「サイン」の時と同様、ちょっとでもできたら、必ずほめてあげてください。

お菓子を食べたい、ジュースを飲みたいなどはお子さんにとってもうれしいことなので、早く身につきます。

こうしたステップを繰り返していくと子どもは自分の要求を言葉で表現する力がついてきます。

繰り返しになりますが、大切なことは、お子さんを必ずほめてあげること、そしてできなくても決して叱らないことです。

私たちのアドバイスによって、多くのお子さんがサインや絵カードで自分の意思を表し、その後、言葉が徐々に出るようになっています。

回答者 徳田克己先生

筑波大学医学医療系教授。教育博士、臨床心理士、専門は子ども支援。全国の幼稚園、保育所などを巡回して、保育者や保護者を対象とした気になる子どもの相談活動を行っている。「気になる子どもの保育ガイドブック」「育児の教科書クレヨンしんちゃん」(福村出版)、「親を惑わす専門家の言葉」(中央公論新社)など、著書多数。