伝わらない原因は「理解言語」が十分ではないから? 発達障害の子どもが人の話や言うことを聞けない時の対処法
発達障害の子どもの中には、大人が話しかけても思うような反応が得られず、伝えたいことが伝わらなかったり、指示が通らなかったりする子どもがいます。このような場合、どのようにその子どもとコミュニケーションをとれば良いのでしょうか?
コミュニケーションには、まずは「理解言語」が大切
ことばには、相手の言ったことを理解する「理解言語」と、自分の思いや考えをことばにして表現する「表出言語」とがあります。
話を聞けない子ども、話しかけてもぼんやりしている子どもは、この2つのうち、「理解言語」の発達が遅れていることが多いのです。
まずは子どもの「理解言語」がどの程度か観察してみよう
大人は子どもがどのくらい話せるか、どれだけ言葉を引き出せるかといった「表出言語」に注目しがちです。しかしコミュニケーションをとる上では、まずは「理解言語」が十分にあるかどうかが重要なのです。
話しかけてもぼんやりしていて、言われていることが掴みきれていない様子の子どもの場合、まずは「言ったことをどの程度理解しているか」を観察してください。
理解しにくいことばを伝えるときには、「絵カード」を活用しよう
子どもが「言ったことをどの程度理解しているか」を観察し、子どもが理解しにくいことがあれば、理解を促すための絵カードを使います。「歯ブラシを持ってきて」というときは、歯ブラシを描いた絵カードを見せます。そうすることで、子どもはことばを理解しやすくなります。
こんな指示では伝わらない!「一度に複数のことを言う」
「早く靴をはいて。はいたらドアを開けて。自転車のところで待っていて」
こんなふうに、一度にいくつかのことを指示したり、伝えようとはしていませんか?
発達障害の子どもの中には、短期記憶が弱く、一度に複数のことを覚えられない子がいます。例えば一度に複数の指示を伝えたとき、ひとつ目の指示が実行できても、そのあと「次に何をするんだっけ?」とふたつ目以降に言われたことがわからなくなってしまうのです。それとは逆に、最後に言われたことだけしか覚えていない場合もあります。
このような子には、一度に複数のことを言わないようにしてください。何か伝えるときは、「ひとつのことを」「短い文章で」伝えることが肝心です。
「●●ちゃんは、靴をはきます」というように、本人の名前を主語にして、「ひとつのことを」「短い文章で」伝えます。子どもが伝えたとおりに実行できたら、その都度ほめてあげてください。そして、次の行動を指示します。もし子どもがことばによる指示を理解しにくいようであれば、絵カードを活用します。
このように「ひとつのことを指示⇒子どもが実行する⇒できたらほめる」の繰り返しが、子どもの理解につながっていきます。
こんな状況では伝わらない!「周囲がざわざわしている中で背後から声をかける」
発達障害のある子どもの中には、周囲から聞こえる音や声の中から、自分が必要とするものを選択的に聞くことが苦手な子がいます。
「何度も呼びかけているのに、私のことを無視する」と叱る親がいますが、叱ってもなんの効果もありません。それが子どもの特性なのです。
たとえば、テレビを見ている子どもに後ろから話しかけたとします。テレビからの音やそのほかの生活音がある中で、子どもは選択的に音を聞き分けられず、聞き取るべきお母さんの声に気づけないのです。
このような場合は、耳からの情報だけでなく、目からの情報も加えて呼びかけると気づきやすくなります。具体的には、背後から声をかけるのではなく、正面にまわってから声をかけましょう。