発達障害にまつわる「あるある」&解決案シリーズ第2回
見たらやらずにはいられない!

著者:筑波大学 准教授 水野智美先生

ケース1 エスカレータを見ると乗らずにいられず、一度乗ったら延々と乗り続ける

多動「うちの子どもは、エスカレータが大好きです。エスカレータを見ると、走って近づき、喜んで乗ります。

大型の家電量販店に連れて行っても、ショッピングセンターに連れて行っても、どこでもエスカレータを見ると、屋上階まで登り、すぐに地下まで降りていくことの繰り返しです。

1階が駐車場になっている大型家電量販店では、店内に入るとすぐにエスカレータになっているので、子どもは真っ先にエスカレータに向かい、エンドレスで乗り続けます。

そのため、電化製品を一つも見ずに帰らなくてはならないこともあります。

本人はとっても満足の様子だけど、親としては、何しに行ったのかわからなくなります」

ケース2 穴を見つけると、必ず物を詰めてしまう

「穴を見つけると、必ず物を詰めてしまう我が娘。

これまでに、コンセントには、ティッシュやクリップ、定規など、さまざまなものが詰められていました。

幼稚園で豆まきをした時には、隣りに座っている子どもの耳の穴に豆を詰めてしまいました」

ケース3 電化製品をすぐに分解や実験をしようとする

「良く言えば好奇心が旺盛なわが子は、電化製品を見ると、『この中はどうなっているのだろう』と思って、すぐに分解しようとします。

時計などはいくつ破壊されたか、もうわかりません。

ドライバーで丁寧に蓋をあけて分解するのではなく、蓋を割ったり、床に落としたりして、力づくで中身を見ようとしているので、決して元通りにはなりません。

また、ストーブがついているのを見ると、物を近づけて、どうなるのかを試してみたくて仕方なくなるようです。

いくらストーブにさわらないように言い聞かせても、紙を近づけてみたり、下敷きを入れてみたりします。

ある時、カーテンの端をストーブに近づけてしまい、カーテンが燃え始め、危うく火事になりそうでした」

頭で考えるよりも先に行動してしまう子ども。こんなとき、どう対応すると良いの?

衝動性の強い子どもは、頭で考えるよりも先に身体が反応してしまいます。

そのため、自分の好きなものが目に入ると、「やりたい!」という気持ちを抑えることができず、つい行動してしまいます。

このような子どもの中には、落ち着いている時や好きなものが目に入っていない時には、してはいけないことを理解していることがほとんどです。

そのため、やってしまった後に親がいくら叱っても、子どもは「ごめんなさい。もうしません」と反省し、なぜ叱られたのかも答えられます。

しかし、数分後にまたやっている、ということの繰り返しです。

>親にとっては「どうしてやってはいけないことがわかっているのに、やるのかしら!」と怒りがさらにこみあげてくることでしょう。

実は、このようなタイプの子どもには、やってしまってから叱っても、全く効果がありません。

このような子どもには、以下の2つの対応をしてください。

①子どもに関心のあるものを見せないようにする

子どもは見てしまうと、「やりたい!」という気持ちが沸き起こり、衝動的に行動してしまうので、できるだけ「見せないように」するのです。

見なければ、やりたいという気持ちが突発的に出ることはありません。

ケース2やケース3の「穴を見つけると物を詰めてしまう」「電化製品を見ると壊してしまう」場合には、子どもの手の届くところに穴のあるものを置かない、電化製品を置かないことが重要です。

コンセントの場合には、コンセントの穴を隠す市販の「コンセントカバー」をつけてください。

②やってはいけないことを事前に伝え,少しでもがまんできたら,たくさんほめる

「この場所に来たら、うちの子はこれをやってしまいそうだ」ということがわかっていたら、事前にやってはいけないことを子どもに伝えてください。

子どもが行動に移すよりも先に、まずは親が子どもに「よく約束を守れたね!」とほめるのです。

ケース1で言えば、家電量販店に到着する前に、「エスカレータは2階に上がる時と買い物が終わって帰る時の2回しか使いません」と約束しておき、2階に上がった時にすかさず子どもを押さえて、「よくがまんできたね、お約束守れたね。帰る時にまたエスカレータを使おうね!」とほめまくるのです。

エスカレータに乗りたい気持ちはあるけれど、お父さんやお母さんからもほめてもらいたいと思うと、がんばって衝動を抑えようと、コントロールしていくことができるのです。

 

著者紹介

水野智美先生

筑波大学医学医療系准教授。臨床心理士。
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解。
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に取り組んでいる。