気になる子の保育
気になる子ってどんな子?
「活動中にじっとしていられない」
「ぼーっとしていてなかなか行動に移せない子がいる」
「偏食が極端に強く、食事が思うように進まない」
どの保育の現場にも、保育所の生活のなかで支援を必要としている子どもがいます。
幼稚園、保育所、認定こども園などに通う子どもたちの中には、医療機関から自閉症スペクトラムやADHDなど発達障害の診断を受けている子どもや、医学的な診断を受けてはいないけれど発達障害傾向のある子どもたちも多く含まれています。
保育の現場で支援が必要な「気になる子」
「気になる子」とは、発達に偏りがあり、保育園の生活の中で特性に応じた支援が必要な子どものことです。発達に偏りがあったとしても、周囲が適切な支援を行うことで、「気になる子」たちは生きる力を十分に伸ばしていくことができます。
一方で、適切な支援が行われない、ほかの子どもたちと同じようにできないと叱られてばかりいる……といった生活が続くと、「気になる子」は「どうせ何をしてもうまくいかない」「自分はダメだ」と最初から諦めてしまうようになってしまいます。
保育者には、「気になる子」の状況や発達の状態を把握し、日常生活を送りやすくするための対応を行うための知識が必要です。
保育者が「気になる子」にすべき3つのこと
「気になる子」に対して保育者がすべきことは、次の3つです。
1、「気になる子」の特性に合わせた対応を行う
2、「気になる子」の保護者を支援する
3、周囲の子どもたちに「気になる子」への理解を促す指導を行う
1、「気になる子」の特性に合わせた対応を行う
「気になる子」の特性に合わせて、さまざまな方法で指導します。たとえば、口頭での指示を理解するのが苦手な子どもに対しては絵カードやジェスチャーを用いるなどの対応を行うことです。
2、「気になる子」の保護者を支援する
小さい子どもをもつ保護者は、自分の子どもの状態になかなか目を向けることができません。そのような保護者の気持ちに寄り添いつつ、子どもの状態の受容を促していくことが大切です。
3、周囲の子どもたちに「気になる子」への理解を促す指導を行う
「どうして〇〇ちゃんはじっとしていられないの?」などという周囲の子どもの疑問に対して、保育者は適切に答え、さまざまな特性のある子どもたちが共に育つためにクラスの子どもたちへ理解を促す指導をしていかなければなりません。
幼少期によくみられる自閉症スペクトラム」と「ADHD」
発達障害にはいくつかの種類があります。子どもによっては複数の種類の特性が合わさっていることもあります。代表的なものは「自閉症スペクトラム」と「ADHD」(注意欠如多動症)です。
「自閉症スペクトラム」には、大きく2つの特徴があります。
① 他者とのコミュニケーションが苦手
・相手と視線を合わせようとしない
・他者への関心が薄く、呼びかけられても反応しない
などといった行動にその特徴が現れます。そのため、周囲の子どもと遊ばずに一人でいる姿がよく見られます。
② こだわりが強く、興味の範囲が限定的で、パニックを起こしやすい
・気に入ったCMのフレーズを繰り返し口にする
・扇風機などくるくる回るものを飽きずにずっと眺めている
などといった行動にその特徴が現れます。型にはまった繰り返しの動作や会話を好みます。
また、変化に対応しにくく、自分で決めた行動パターンにこだわることがあります。そのため、スケジュールが直前に変更されるとパニックになることがあります。
この2つの特徴に加えて、感覚が敏感すぎたり、逆に鈍感すぎたりすることがあります。たとえば、からだに少し触れられただけで刺されたような痛みを感じる、反対にけがをしてもあまり痛みを感じない、などです。
「ADHD」は、大きく2つの型に分けられます。「不注意型」と「衝動型」です。「不注意型」と「衝動型」の両方の特性がある子どももいます。
「不注意型」の子どもは、「注意や集中を保つことができる時間が短い」「行動の途中で意識が別のことにそれてしまう」といったことが特徴です。たとえば、
・食事や着替え途中でぼんやりしている
・ちょっとした物音に気を取られて集中がそがれる
・活動を最後までやり遂げることができない
などの行動にその特徴が現れます。
「衝動型」の子どもは、「思いついたら考える前に行動してしまう」「じっとしていられない」といったことが特徴です。たとえば、
・順番を守ることができず、ほかの子を押しのけてしまう
・座って待つことができず、ふらふらと立ち歩く
・静かにしなければいけない場面でおしゃべりしてしまう
などの行動にその特徴が現れます。
また、感情のコントロールが苦手で、ちょっとしたことで友だちに手をあげてしまったり、大声を出してしまったりすることがあります。そのため、周囲からは「乱暴な子」「大人の言うことを聞かない子」などと見なされてしまうこともあります。
保育者は、このような発達障害についても知識をもち、「気になる子」へその子の特性に合わせた対応や指導を行っていく必要があります。
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