気になる子の保育
気になる子どもの保護者への支援の基本

「活動中にじっとしていられない」
「ぼーっとしていてなかなか行動に移せない子がいる」
「偏食が極端に強く、食事が思うように進まない」
どの保育の現場にも、保育所の生活のなかで支援を必要としている子どもがいます。
「気になる子」って?
「気になる子」とは、発達に偏りがあり、保育園の生活の中で特性に応じた支援が必要な子どものことです。発達に偏りがあったとしても、周囲が適切な支援を行うことで、「気になる子」たちは生きる力を十分に伸ばしていくことができます。
→前回の記事「【気になる子の保育】Point3. ルールを決めて守れたら、即「ほめる」!」
気になる子どもの保護者が、わが子の障害を受容できない背景は?
発達障害は身体障害と異なり、障害が目で見てわからないこと、脳波やMRIなどの検査をしても医学的な異常が発見されない場合が多いことがあります。そのため、保護者は「他の子どもとちょっと違う」「もしかしたら遅れているのかも知れない」などと不安を感じつつも、「そのうち追いつくだろう」と考え、不安を封じ込めようとします。
このようなときに、子どもの様子を指摘すると、保護者は自分を責められたと感じて、激しく怒ったり、ひどく動揺してしまったりします。多くの保護者がショックを受けたり、保育者に強い反発の気持ちを持ったりしてしまいます。
保護者の中には、保育者が子どもの状態を伝えた後に保育者を避けるようになったり、取り乱して大騒ぎをしたりするケースもあります。保育者を辞めさせるよう行政に訴えたり、子どもを退園させてしまうことさえあるのです。
保護者へのよりそいかたは?
保護者が、わが子の障害を受容する過程の中で、
「誰もじぶんのことをわかってくれない」
と感じて、保育者に背を向けることがあります。
「うちの子どもが問題を起こすのは、先生の保育の仕方が悪いからだ」などと保育者に攻撃的になることもあります。
これらはすべて、保護者が子どもの障害を受容するために葛藤していることから起こっています。
保育者ができることは、保護者の不安に耳を傾け、うなずき、受け止めることです。発達障害の傾向にある子どもをもつ保護者が、わが子が他の子どもと違うことに気がつき、ショックを受けてから、わが子にはわが子なりの育ち方があると考えられるようになる(障害受容ができた段階と考えます)までに、さまざまな過程をたどります。また、障害受容ができるまでに何年もの長い時間がかかることもあります。
保育者は、保護者が障害受容のどのような段階にいるのかを考えながら、保護者の言動にあまり左右されないようにしましょう。保護者が攻撃的になっているときには、聞き流すことも必要です。
保護者に子どものようすを伝える際の方法
子どものもっている能力を伸ばすためには、子どもにとって最もよい対応方法を 保護者と保育者で考え、園と家庭で同じ方法を用いることが必要です。
ただ、保護者に子どもの気になる点を伝える時には配慮が必要です。
保護者に子どもの状態に気づいてもらいたいという思いから、子どもが苦手して
いることやできないことばかりを伝えようとすると、保護者はより現実から目をそらしてしまいます。
まずは、その子どものよい面を伝えたうえで、子どもが抱えている問題について話すようにしましょう。
また、園の中で子どもにおこなった対応で有効であった方法を具体的に紹介し、今後園と家庭でどのように対応することが子どもにとって最適であるのかを話し合うとよいでしょう。
保護者が保育者の話を聞こうとしない場合は?
園での様子を伝えても、「家庭ではできている」といって保護者が保育者の話を聞かない場合があります。そのときには、保育参観や運動会、発表会などを活用し、子どものようすをありのままに保護者に見てもらうとよいでしょう。
保護者が見ていることがわかると、普段とは違うようすになってしまう子どもの場合には、保護者が見ていることを、子どもに気づかれないようにする必要があります。「みんなの前でできないのはかわいそう」と考える保育者は多いと思いますが、今は保護者が子どもの状態に向き合えることを優先したほうが、その子どもにとって将来的によい結果になると割り切りましょう。
→次回は、第4回 「友だちを叩いてしまう子どもへの対応」 です。