発達障害の子どもの感覚過敏が心配

娘に感覚の異常があることに困っています。子どもの感覚の異常はこの先、直らないのでしょうか。

4歳半の娘は、3歳の時に発達障害(自閉症、ADHD)であると診断を受けました。
いろいろなこだわりがありますが、母親である私が今最も困っているのは、娘に感覚の異常があることです。
嫌いな音、嫌いな肌ざわり、嫌いなにおいなどがあります。
生活のいろいろなところでひっかかり、本人が困り、よく大泣きます。
私もこの先どうなっていくのか、不安で仕方がありません。子どもの感覚の異常はこの先、直らないのでしょうか。

発達障害の傾向のある人たちをみると、大人になっても変わらず苦手な音やにおい、肌ざわりがある人もいますが、子どものころに比べてかなり改善した例が多くあります

138065お母さんがお子さんのことを心配しているお気持ちはよくわかります。発達障害のある子どもに感覚の異常があることはとても多く、感覚過敏であったり、逆に鈍感であったりします。

特定の音、肌ざわり、光、においが苦手です。

発達障害のある子どもが、ヘアードライヤーの音が苦手、ザワザワしている音(雰囲気)が苦手、洋服のタグが苦手、このズボンでないとはけない、炊き立てのご飯のにおいがダメ、などのことを相談でよく聞きます。

この状況はずっと変わらないのでしょうか

私の周りにいる発達障害の傾向のある人たちをみると、変わらず苦手な音やにおい、肌ざわりがある人もいますが、子どものころに比べてかなり改善したとみなさん言います。

どのように改善していくのか。

これから説明する4つの方法があり、どれか1つというよりも、これら4つの方法をすべて上手に使いながら改善していきます。

その1:嫌なものには近づかないようにすることです。

洋服のタグがどうしても苦手なのであれば、子どもにそれをガマンさせて着させるのではなく、買ったらすぐにタグを切り取ってやればいいのです。

大人も嫌いなものはできるだけ食べないようにしますよね。

それと同じように、避けることができるのであれば、除いてあげることが第一です。

その2:スモールステップで慣れさせることです。

ドライヤーの音が苦手で、同じような音がする外出先のトイレの手を乾かす温風機の音が嫌な子どもには、遠くから1日に1メートルずつ近づいて行って、2週間かけてその温風機のそばを通ることができるようにするというスモールステップによる脱感作という方法を取ります。

つまり、少しずつ慣れていくのです。

ポイントは少しでもできるようになったら、その都度大げさにほめてあげることです。できないことを叱るのではなく、ちょっとでもできたらほめるのです。

その3:ガマンの力を身につけさせることです。

ひとは成長するにしたがって、いろいろなことをガマンできるようになります。

ポイントは上と同じで、少しでもガマンできたらほめてあげることです。

幼稚園の制服の肌ざわりが苦手な子どもは制服をよく脱いでしまうのですが、少しでも着られていたら「今日は10分も着られていたね」とほめます。

「がんばってガマンしたらほめられる」という図式を子どもの中に作ってあげます。

そうすれば子どもはほめられたいのでがんばります。子どもは、叱られたらがんばれないのです。

その4:子どもの成長を待つことです。

発達障害の傾向のある多くの大人は、「成長とともに嫌な程度が軽くなる」と言います。

すごく嫌だったメロディが徐々に大丈夫になった、見るのも嫌だった食べ物を突然食べられるようになったという話をよく聞きます。

それらの理由は「成長による感覚の変化」です。

何がどう変化していくのかはよくわかっていませんし、予測することはできませんが、4歳のお子さんの今の状態がずっと続くことは考えられません。

多くは良い方向に変化しますが、時には新しい苦手なものが現れてくることもあります。

私の知人でゲームセンターにあるエアホッケーの「カン、カン」という音がすごく嫌だということが最近わかったという人がいます。

でも、苦手ならばそれに近づかなくていいのですから、生活の大きな問題になることはありません。

回答者 徳田克己先生

筑波大学医学医療系教授。教育博士、臨床心理士、専門は子ども支援。全国の幼稚園、保育所などを巡回して、保育者や保護者を対象とした気になる子どもの相談活動を行っている。「気になる子どもの保育ガイドブック」「育児の教科書クレヨンしんちゃん」(福村出版)、「親を惑わす専門家の言葉」(中央公論新社)など、著書多数。