呼んでも返事しないのは「ながら行動」ができないから?複数のことを同時に行うのが苦手なお子さんを支援するコツ
日常の中で、人は無意識のうちに「ながら行動」を行っています。「ながら行動」とは、音を聞きながら手を動かす、動いているものを目で追いながらキャッチするなどの、複数の動作を同時に行うことです。
特に運動やスポーツにおいては、「ながら行動」は必須のものです。ボール投げや縄跳びなど子ども時代に定番の運動は、大人からみれば実に単純なものに思えるかもしれません。しかし、その運動の流れを細分化してみると、投げる方向を見ながら腕や手首を動かしたり、縄をまわしつつ目で追ってジャンプしたりと、いくつもの動作を同時に行っているのです。
発達障害の子どもの中には、この「ながら行動」を苦手とする子どもが多くいます。1つの動作に気をとられていると、ほかの動作に意識が向かないのです。
このように、子どもがある動作ができずにつまずいているとき、そのつまずいている動作をよく観察してみると、複数の動作が組み合わさっていて、その中の要素の一つがクリアできないために、うまく一連の動きの流れを再現できていない場合があります。
遊んでいる子どもに声をかけても反応しない、その原因も……
子どもが遊んでいる最中に、親が声をかけても反応しないことがあります。これもまた「遊ぶこと」と「声に反応すること」という、2つの動作を同時に行えないからです。
「どうして何度声をかけても振り向かないのか」「親を無視しないで」などと叱っても、この場合は効果がありません。
遊んでいる子供に呼びかけても反応が得られない場合は、子どものそばへ行き、肩をたたいたり、子どもの視界に入ってから手を振ったりして、まず子どもの注意をこちらに向けさせます。「遊ぶこと」という1つの行動を、一旦ストップさせるのです。そして、遊びの手をとめたことを確認できたら、話しかけるようにしてください。
複数の行動を同時に行うための練習方法
複数の動作を同時に行う「ながら行動」が自然にできるようにするためには、一連の動作の流れを細かいステップに分けて、少しずつできるように練習しましょう。
縄跳びを例にとると、まずは「縄を飛び越える」という動作から始めます。床に縄を置いて、止まっている縄を飛び越える練習をしましょう。次には「揺れている縄を見ながら」+「縄を飛び越える」という組み合わせに挑戦します。床に置いてある縄を親が揺らして、そこを子どもが飛び越える練習をします。次には、縄を手で持たせて……と、動作を1つずつの要素に分けて、1つずつクリアさせていきます。
できるようになった動作を組み合わせていくことで、やがて複雑な一連の動作、すなわち「ながら行動」ができるようになります。