発達障害にまつわる「あるある」&解決案シリーズ第8回
同じ方向を見ていても、見えているものは違う?
著者:筑波大学 准教授 水野智美先生
ケース1「絵本を読んであげると、本筋以外のところが気になってしまう」
「子どもと一緒に絵本を見ていても、子どもは絵本の端の方に描かれている、こまごまとした背景のようなところにしか目が行きません。
先日も、犬の親子の絵本を読んだ後に、『この絵本に何がでてきたかな?』と尋ねると、『雲!』と答えます。
確かに、犬の親子が外で遊んでいる場面で雲が描かれていましたが、本題と大きく離れているのに……と愕然とします。」
ケース2「探しものが苦手で、決まった場所以外に置いてあると見つけられない」
「うちの子どもは、なかなかものを探せません。
先日も、『冷蔵庫から牛乳を出して』とお願いしたのですが、『冷蔵庫の中に牛乳が見つからない!』と言って、大騒ぎします。
仕方がなく、私が冷蔵庫まで行き、中を見ると、ちゃんと牛乳があります。
子どもに、『ここにあるでしょ』と言うと、『いつも置いてあるところになかったから、わからなかった!』と自分は悪くないとばかりに怒ります。
でも、実際にあったのは、いつも置いてあった場所の隣りで、ちょっと視線を動かせば見えるはずなのに……と思ってしまいます。」
視点がずれていたり、視野が狭かったりする子ども。こんなとき、どう対応すると良いの?
発達障害のある子どもが見えている範囲はとても狭いと言われています。
それは、決して視覚に障害があるのではなく、「視界に入っているけれども、意識が向いていないために見えていない」状態なのです。
つまり、発達障害のある子どもは、細い筒を通して見ているようなもので、意識を向ける範囲が限定されているのです。
そのため、ケース1のように、ふと自分が目に留まったもので、興味があるものが描かれていれば、ずっとその部分を見ていて、他の部分は目に入りません。
また、ケース2のように、探しものを見つけられないことはよくあります。
たとえ、それが目の前にあっても見つからないのです。
いつも決まった場所にあれば、そこを見ることができますが、そこになければ、臨機応変に視線を動かすことは難しいです。
絵本の挿絵を見せても、大人が見てほしいものを子どもが見ているとは限りません。
子どもに見てほしいものがあれば、「この犬を見て!」などと指をさして、意識を向けさせる必要があります。
なお、大きなサイズの絵本では、子どもはその中の一部しか見えていないので、できるだけコンパクトなサイズの絵本で、あまりたくさんのイラストが描かれていないものを選ぶとよいでしょう。
うまくものが探せないことについては、いつも決まった場所に置くことを心がけてください。
また、置き場所が決まっていないものを子どもに探させる時には、「冷蔵庫の中」という漠然とした表現を使うのではなく、「冷蔵庫の一番下の段の真ん中」などと、できるだけ具体的に伝えると、子どももその場所を見て、探しやすくなります。
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