発達障害にまつわる「あるある」&解決案シリーズ第4回
大筋に関係のないことが気になって先に進めない

著者:筑波大学 准教授 水野智美先生

ケース1「絵本のストーリーに納得できない娘」

033170「うちの子どもは、絵本を読むときに、いつもストーリーと関係のないところでひっかかり、『なんで?』『おかしいよ』を連発して先に進めません。

先日も、ネコとネズミが友だちであるという設定のお話を読んでいたら、『ネコとネズミがお友達というのは、おかしいよね。ネコはネズミを食べちゃうでしょ』と言いだし、『どうしてお友達なの?』とばかり聞いてきて、そのページから先を読ませてくれませんでした。

また、電車が走っている音を『ガタン、ゴトン』と表現している絵本を見ていると、『電車は、ガタン、ゴトンって言わないよ。この本はおかしいよ』と怒り出します。

保育園でも、先生がみんなに絵本を読んでいる時にお話の中で気になることがあると、うちの子は『おかしい!』と指摘し続けるので、先生はその先の絵本を読めません。

そこで、絵本の時間になったら、園長先生のところに行って、いろいろな絵本の間違いを園長先生に教える係になったそうです(体よく、クラスから追い出されました)。

ただし、『自分は園長先生におかしいところを教える係なんだ』とはりきってしまい、絵本の中で『おかしい』ことを探すことに拍車がかかってしまいました。」

ケース2「BGMの歌詞の意味に引っかかってしまい、お遊戯ができない」

「幼稚園のお遊戯会で、昔流行した曲が使われました。その曲の中のフレーズに『白のパンダをどれでも全部並べて』とありました。

うちの子どもは、『ねぇ、ママ、パンダは白と黒だよ。なんで白なの』と何度も何度も聞いてきます。

また、『パンダを全部並べるって、どういうこと?』と、ここも納得できません。

幼稚園の先生にも、毎日、聞いていたようですが、本人は納得ができないので、お遊戯の途中でも、このフレーズになると考え始め、その後、全く踊れませんでした。」

ケース3「お着替えの途中に、服から糸が出ていたり、しわがあったりすると……」

「うちの子どもは、着替えの最中に、ズボンから糸が出ていたり、シャツにしわがあったりすると、そのことに気をとられて、『こんなのを着ていたらおかしい』と怒って、着ようとしません。

でも、本人は、ズボンをはかずにパンツ姿だったり、シャツを着ていなくて上半身が裸の状態であっても、そのことの方がずっとおかしいことに気づいていません。」

「そんなことを気にしなくていいから・・・」と言っても、全くきかない子ども。こんなとき、どう対応すればいい?

 とてもささいなことが気になってしまい、それがクリアされないと先に進めない子どもがいます。

「そんなことは絵本の内容に関係ないから気にしなくていいの」「歌の歌詞は、ちょっと違ってもいいの」などとごまかして、大人が先を進めようとしても、子どもは納得できないので、ずっと「なんで?」と聞き続けてきたり、そこから先のことを考えられなくなって止まってしまいます。

 このような場合に、子どもが納得する答えを大人ができれば、子どもも立ちどまることはありません。

可能であれば、子どもが気になっていることを取り除くか、納得できる答えをしてあげてください。

たとえば、最後の例で、子どもが落ち着いて、次の行動に移すことができるのであれば、ズボンから出ている糸を切るとか、しわのないシャツに交換します。

 ただし、必ずしも子どもが気にしていることを解決できたり、取り除けないような場合があります。

本人が納得できないということを言ってきたら、「あなたは、そう感じたのね。ママはそのように思わなかったわ」などの言葉で聞き流してください。

とりあえず、本人の気がすむように話をさせるけれど、それ以上は深く突っ込んで聞かないのです。

なぜなら、子どもの質問を掘り下げていくと、子どもは気になっていることにより固執してしまって、先に進めなくなってしまいます。

また、気になることを横に置いておく練習も、少しずつしていく必要があります。

納得いかないことがあっても、親子で、「そういうことも、あるある」という言葉を言い合って、「納得いかないことがあっても仕方がないことがある」と学習させ、気持ちを落ち着かせることをしてみてください。

著者紹介

水野 智美先生

水野智美先生

筑波大学医学医療系准教授。臨床心理士。
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解。
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に取り組んでいる。