発達障害にまつわる「あるある」&解決案シリーズ第1回
最初が肝心!

著者:筑波大学 准教授 水野智美先生 

ケース1「朝晩と決めた儀式をしないと、仕度に取りかかれない」

寝ている女の子「うちの子どもは、自分が寝る前に20体の人形をすべて寝かしつけてからでないと寝ないし、起きてからもその人形をすべて起こして朝の支度をしてあげないと、自分の朝の支度にとりかかりません。これは、子どもがなかなか寝なかったり、起きてからもグズグズと支度をしなかったりしたために、許してしまったことです。今でも、寝る前に1時間、起きてから1時間、人形のお世話をしないと自分の行動に移れません」

ケース2「帰宅をスムーズにするために、コースにコンビニを組み込んだ結果……」

「うちの子は、幼稚園バスから降りてから家まで歩いて帰る途中で道に座り込んだり、寝そべったりしてしまって、いつも連れて帰るのが大変でした。そこで、帰り道にあるコンビニに寄って、子どもの好きなジュースを買うようにしたところ、子どもは嫌がらずに歩いてくれるようになりました。しかしその代わりに、毎日コンビニでジュースを買わされるはめになってしまいました……」

ケース3「家庭菜園のお世話をお手伝いしてくれるが、臨機応変に水やりできない」

「家庭でプランター栽培を始めました。うちの子どもは水をやるのが好きで、毎日水やりのお手伝いをしてくれます。

しかし困ったことに、雨が降っていても、種をまいていないときでも、水をやると言って聞かず、せっせと水やりをします。そのうち根腐れしてしまいそう……」

ケース3「水やりを買って出てくれたが、臨機応変にできない」

「朝のお手伝いとして、郵便受けから朝刊をとってくるようにさせました。

しかし、休刊日に郵便受けに新聞がないと大泣きをします。新聞がない日は、子どもが起きる前に前日の新聞を郵便受けに入れておかなくてはいけません……」

一度覚えたルールを柔軟に変えることが苦手な子ども。こんなとき、どう対応したらいい?

気になる子どもの中には、一度覚えたルールを変えることが苦手な子どもがいます。「この時にはこうする」というパターンを決めると律儀に守るので、その通りスムーズに生活を送っていくことができるという良い面もあります。

一方で、ケース1の例のように「寝る前に全部の人形の世話をしないと寝ない」、ケース2のように「幼稚園の帰りにジュースを買ってもらわないと家に帰らない」など、親にとっては好ましくないパターンを覚えてしまったときも、なかなかその修正がききません。

親としてはその場しのぎで教えてしまったことや、「ここで大泣きされると面倒だから」などの親の都合でした対応が、あとあとで余計に面倒なことになってしまいます。

また、プランター栽培や新聞のお手伝いについては、「こういうときはお手伝いをするけれど、こういうときはしない(たとえば、晴れの日は水やりをするけれど雨の日はしないなど)」ということが目で見てわかるようにしておくと、子どもにとって混乱しなくてすみます。

すべてのケースに当てはまりますが、最初に適切なルールを決めて、後から子どもに行動を修正させなくてもすむような対応をすると、子どもも親も楽に生活ができます!

著者紹介

水野 智美先生

水野智美先生

筑波大学医学医療系准教授。臨床心理士。

専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解。

近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に取り組んでいる。