発達障害にまつわる「あるある」&解決案シリーズ最終回
おっちょこちょいの度が過ぎる?トラブルになりがちな注意力

著者:筑波大学 准教授 水野智美先生

ケース1 言うことはちゃんときけるけれど、間違いが多い

「うちの子どもは、『~をしなさい』と言うと一応やってくるのですが、いつもどこかを間違えています。

先日も、靴を履くように言って、外に出てからふと子どもの足元を見ると、兄のぶかぶかの靴を履いています。

他にも、朝パジャマから洋服に着替えるように言うと、パジャマを脱いでもう一度、脱いだパジャマを着ていることがあります。

おそらく『洋服を着なくてはいけない』ということしか頭にないようで、自分が脱いだパジャマが目に入ったら、何を着なくてはいけないのかを忘れてしまったのだと思われます。

幼稚園でも、先生から『名前を呼んだ人から順に取りに来てください』と言われると、先生のところに取りにいくのですが、他の子どもの物をもってきてしまうようです」

ケース2 自分のものではなくても、目に入ったものを使ってしまう

「うちの子は、うっかり人の物を使ったり、持ってきてしまって、しょっちゅうトラブルを起こしてしまいます。

先日も、小学校で自分の消しゴムを探していたら、隣の友だちの消しゴムが目に入ったようです。

『あ、こんなところに消しゴムがあった』と思って、その消しゴムを使い、その後、うっかり自分の筆箱にしまったところ、その友だちからひどく怒られたそうです。

しかし、うちの子どもは、使った消しゴムが友だちの物であったことを忘れてしまっているので、友だちがなぜ怒っているのか、さっぱりわからなかったようです」

注意力の配分が苦手な子ども。こんなとき、どう対応すると良いの?

 発達障害のある子どもは、注意の配分がうまくできません。

一つのことに注意を向けていると、別のことがおろそかになってしまいます。

特に「これをやらなくてはいけない」と思うと、そのこと自体は守れますが、それ以外のことを覚えておけないのでミスが続き、「せっかくやったのだけれども、おしいなぁ……」という状態になります。

ちなみに、小学生では、宿題をやったのに、次の日に学校に持って行くのを忘れるケースがよくあります。

このように、一生懸命にがんばったのに結果に結びつかないことや、悪気はないのに友だちとトラブルになってしまうことがよくあるのです。

 まずは、一つひとつの行動を間違えずにできるように、子どもが目で見て確認しやすい環境を整えることが必要です。

たとえば、ケース1の「兄のぶかぶかの靴を履いて……」というエピソードへの対策として、玄関に家族それぞれの靴を置く場所を決めておきます。

色違いの足型を貼っておき、○○くんの靴を置く場所、お兄ちゃんの靴を置く場所、お父さんの靴を置く場所などと決めておきます。そうすれば、脱ぐときもその足型の上に靴を揃えることができますし、履くときも「自分の靴はどこかな?」と探さなくても、「いつもの場所」と思えばスムーズに行動に移せます。

また、着替えの時にも、脱いだ服を入れるかごは黄色、新しく着る服が入っているかごは青色などと色を決めておき、それが習慣化されれば、脱いだ服は黄色のかごに入れ、青いかごから次に着る服を取り出せるようになり、間違えることが減ります。

 発達障害のある子どもは、落ち着いているときには問題なくできることも、焦ってしまうと、ミスが増えることがあります。

焦らせずに一つひとつのことを確認しながら進めていけるように、時間に余裕をもって行動するようにしましょう。

著者紹介

水野 智美先生

水野智美先生

筑波大学医学医療系准教授。臨床心理士。
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解。
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に取り組んでいる。