こんなこと、あるある!

著者:筑波大学 准教授 水野智美先生

ケース1

085178「うちの子どもは、遊びはじめると途中でやめられなくて、私がおもちゃを取り上げて無理にやめさせようとすると、泣き叫んでいました。

そこで、保育園の先生に相談したところ、『いつまで遊んでいてもよいのかが目で見てわかるように、砂時計があるといい』と教えてもらいました。

そこで、さっそく、砂時計を買ってきて、『お砂が落ちたら、終わりです』と教えて、遊びをやめさせようとしました。

ところが、その砂時計にはキラキラした砂が入っていて、うちの子どもは砂時計をひっくり返すと、うっとりとその砂時計を眺めていて、砂が落ちると、かえってパニックを起こすようになってしまいました…」

ケース2

「私の娘は、しょっちゅう幼稚園で、先生に叱られているようです。

しかし、先生に叱られたことを家に帰ってから私に報告すると、私からまた怒られることを学習しました。

そこで、私が『今日、何があった?』と聞いても、絶対に先生に叱られたことは言いません。

しかし、娘は、おもちゃのピアノをひきながら、自分が体験したことを自分勝手に即興の唄にして歌うのが大好きです。

それを横で聞いていると、『今日も、お友だちを叩いて、先生に叱られた』『今日も、体操の時間にみんなといっしょにやるのを嫌がって怒られた』ことがわかります。

そのため、結果的に私から叱られてしまいます。

歌いたいのだったら、私が聞いていないところで歌えばいいのに、と思うのですが…」

どう対応すると良いの?

発達障害のある子どもは、先の見通しを持つことが苦手です。

この先に何があるのかを思い浮かべることができません。

私たち大人は、苦手な作業をする時でも、「あと残りが10分だからがんばろう」とか、「終わったらごほうびとしてお菓子を食べよう」などと考えて、その作業をやり遂げることができます。

また、カラオケや宴会も、時間が来たら、切り上げることができます。

それは、先の見通しを持てているからです。

しかし、大人であっても、苦手な作業を延々としなくてはならず、続けた先に良いことがあると思えなければ、続けられません。

また、カラオケや宴会も、楽しんでいる途中で急に「もう、終わりです。帰ってください」と言われたら不満が残ります。

カラオケがいくら楽しくても、切り上げられるのは、一般的には、はじめから時間に制限があり、終了の時間を意識しながら、残りの時間を楽しめるからです。

ケース1のように、子どもが遊んでいる最中に親が無理やり遊びをやめさせれば、子どもは大きな不満を感じるのですから、パニックになるのは当然です。

あらかじめいつまで遊んでもよいのかを伝えておく必要があります。

また、言葉で伝えただけでは、時間の感覚はもちにくいので、目で見て、あとどれくらい時間が残っているのかがわかるようにしてください。

そのために、砂時計やキッチンタイマー、残り時間が目で見てわかる時計(タイムタイマーという発達障害のある子どものために作られた時計が売っています。また、スマホやタブレットでその機能があるアプリがあります)が効果的です。

しかし、ケース1のお子さんのように、砂時計のキラキラした砂に見とれてしまうことがあります。

その時には、砂時計ではなく、他の物を用いてください。

ケース2の子どもは、「先生に叱られたことを母親に報告すると、母親からも叱られる」ことを学習しているのは、一見、先の見通しが持てているように見えます。

しかし、その後の「即興の唄」でばれていることに子どもは気がついておらず、やはり目の前のことより先は見通せないことを指しています。

悪いことを隠し通せないのは、かわいいところでもあるのですが。

 

著者紹介                                 ビシュケク1 (25)

水野 智美・・・筑波大学医学医療系 准教授 臨床心理士
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に取り組んでいる。