発達障害にまつわる「あるある」&解決案シリーズ第7回
子どものころの誤学習を大人になっても修正できない

著者:筑波大学 准教授 水野智美先生

ケース1「思い込みが強く、周りに諭されても修正できない」

004184「幼稚園に子どもを通わせている、あるお母さんの話です。

そのお母さんは、スイカの種を飲み込むと、盲腸になると信じています。

ある時、お子さんがスイカの種を飲み込んでしまったのを見て、お母さんは『うちの子が盲腸になってしまう』とひどく不安になってしまいました。

そこで、遠く離れて住むご両親に電話をして、『子どもがきっと盲腸で入院するから、手伝いに来て』と言ったり、友人である私に何度も電話で、『どこの病院に行けばいいのか』と聞いてきたりします。

『スイカの種を飲み込んだぐらいで、盲腸にはならない』と伝えても、聞く耳をもってくれません。」

 

ケース2「一度決めた独特のルールから抜け出せない」

「うちの子どもは、もう中学生になりますが、横断歩道で、青信号では止まって待ち(横断歩道前に足型が描かれていれば、ご丁寧に足型の上に立っています)、点滅したら、走って渡るというやり方を崩しません。

青信号で渡るように促しても、全く動こうとしません。

右左折する車は、青信号でも立ち止まっているうちの子どもを見て、『この子は信号を渡らないのだろう』と思って進んでしまいます。

しかし、うちの子どもは信号が点滅した瞬間に走り出すので、これまでに何度も車に轢かれそうになったことがあります。

そんな怖い思いをしても、がんこに青信号では渡りません。」

 

どうしてこうなったの?

 発達障害の傾向がある人は、大人になっても子どもの時に覚えたことをがんこに守ろうとしたり、それがたとえ間違ったことであっても、修正できないことが多くあります。

第1回の「あるあるシリーズ」でも書きましたが、特に最初に覚えたことは後から修正しにくいのです。

間違ったことを学習してしまうと(これを誤学習と言います)、大人になってもそれが続いてしまいます。

 「スイカの種を飲み込むと盲腸になる」と思い込んでいるお母さんは、周囲の人がどんなに説得しても、きっと納得せず、これからもずっとその考えを持ち続けてしまうでしょう。

おそらく、このお母さんは子どもの頃に「スイカの種を食べると盲腸になるよ」と脅され、冗談だとわからずに信じてしまったのです。

 「点滅しないと信号を渡らない(しかも走って)」人も、青信号で渡るようにいくら指導されても、交通事故に遭いそうになっても、全く自分の行動を変えません。

このお母さんに話を聞くと、小さい頃に横断歩道を渡る際に、信号が点滅してたので、「信号がパカパカ(点滅のこと)しているから,走って渡ろう」と言って、子どもの手を引きながら、何回か走ったそうです。

それまでは、横断歩道や信号について特に話をしたことがなかったということでした。

その時にはじめて、お子さんは「信号」「点滅」を意識し、「走って渡る」という行為と結びついてしまったのでしょう。

 このように、最初に誤学習しないように、発達障害のある子どもには間違った情報を伝えたり、不適切な行動のモデルを見せないようにしたいものです。

 

水野智美先生

筑波大学医学医療系准教授。臨床心理士。
専門は命の教育、乳幼児期の臨床保育学、障害理解。
近年では幼児に対する命の教育や気になる子どもの対応に精力的に取り組んでいる。